力作の公安ノンフィクション

IMG_3724かつての警察小説といえば殺人、誘拐、警察内部などを描いたものが多く、例えば警視庁のセクションでは、刑事部や組織犯罪対策部を舞台としていることが圧倒的でした。もちろん、ノンフィクションや映像ドキュメンタリーも同様でした。
それに比べて“公安部”をテーマとした作品は少なく、最近では珍しくなくなりましたが、以前は一つのタブーになっていたのかも知れません。それでなくても、公安部(警視庁だけが独立した“部”であり、その他の道府県は“警備部”の中に公安の各課がある)は、秘密主義であり、内部でもお互いに何を調査しているのか分からないという謎めいたイメージがありました。
これは事実で、一例では所轄警察署の入口で警備に当たる通称“立ち番”も公安刑事は“面(顔)が割れてしまう”と言って嫌がっていました。現在はどの署も人員が足りないということで、入口に立っているようです。また、今回紹介した「狼の牙を折れ」にも書かれていますが、刑事部や組織犯罪対策部とはしっくりいっていないことも否定できないでしょう。それと「公安調査庁」とも同様です。“あいつら(公調)、また、俺たちの邪魔をした”という世界です。
さて、公安小説も“外事”に関する事件について書かれたものが多く、それは麻生幾さんの「宣戦布告」や「ZERO」が初めての本格的なものだったと記憶しています。しかし、描写が極めて難しいために国内の視察対象者や団体を書いたものは多くありませんでした。
それが、小説ではなくノンフクションで、しかも“実名”で公安刑事などが登場するのですから、画期的な単行本になっています。私も一気に読みましたし、捜査の事実が書かれていますから、どんどんと引き込まれていきました。著者の渾身の一冊と思います。ちなみに、門田隆将さんのノンフィクションは、「この命、義に捧ぐ~台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡」が初めてでした。
それにしても、三菱重工爆破事件からもう40年になるのですね。今考えると、東京もずいぶん物騒な時代だったと思います。

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