JR東の労使関係が完全に破綻か

状況がかなり混乱していて、正確なところは分かりませんが、JR東労組の組合員が大量に脱退していること、会社(東日本旅客鉄道株式会社)と組合との関係が破綻してしまったことは事実のようです。以下、労組問題や公安事情に詳しい友人の見立てです。なお、前提としては先日もお伝えしたとおり、この組合には相当数の革マル派の同盟員が指導的立場で影響力を行使していること、しかも、その見解は自民党政権でも民主党政権(当時)でも明確に認めていることです。また、革マル派の正式名称は、「日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派」で、警察は「極左暴力集団」としています。つまり、世界最大級の旅客鉄道企業内の圧倒的多数組合が革マル派に実質的に支配されているということになるでしょう。関係者からは極めて異様な事態で指摘されているようです。そして、こんな重大なことが起こっているのに、ほとんど報道さていないことも同様に異常です。

まず、31年前の国鉄民営分割化のときの当時の国鉄と労組の思惑を一致させたことが、今起きていることの最大の原因だろう。当局はうるさい国労(国鉄労働組合)を少数派に転落させたかったし、今のJR東労組の主流派を占めている旧・動労(国鉄動力車労働組合)は当時から革マル派の影響下にあり、その独特な組織温存体質から、民営分割化に積極的に協力した。つまり、利害が完全に一致したということだ。それからいろいろあったが、今日までその関係がダラダラと続きていた。しかし、会社は東京五輪や社長の経団連副会長就任のこともあり、端的に言えば、過激派に支配されたこの組合を潰したかったと思われる。

詳しくは検索していただきたいが、十数年前に発生した「浦和電車区事件」を契機として、それまである意味、東労組を利用してきた(その逆も)会社もさすがにおかしいと感じ始めて、労務政策を少しずつ転換してきた。そして昨年、労組がスト権投票(実際にはみたいなもの)を実施して、今年の春闘はそれを背景に交渉を有利に進めようとしてきた。

このストは対象職場を限定したもので、電車が止まって利用者に迷惑をかけるものではなかったが、会社はここぞとばかりに、「(ストは基本的に封印している)労使共同宣言を踏みにじった。宣言は失効だ!」と労使交渉で明言した。なお、先日の富田社長の記者会見でもこのことは触れられていたが、なぜか、ホームドアのことばかりが報道されていたのは解せない。

労組も当初はある程度、ストは見せかけだったので、会社の強硬な姿勢は予想できなかった。これはまったくの読み違いであり、戦術の決定的なミスで、ここから組合員の大量脱退が始まった。それまでも、度を越した選挙運動や平和行事への参加、運転職場(運転手と車掌)への極端な優遇などで、つくづく嫌気が差していた多くの組合員は起こっていることを見て、読んで、会社も(脱退した)組合員は全力で守ると遠回しに言い始めたこともあり、その動きが加速している。

それでは、どのくらいの組合員が脱退しているかだが、正直なところ、情報が交錯していてはっきりとは分からない。それでも、選挙速報ではないが、“過半数に届く勢いか”という趨勢のようだ。ただ、過半数を越えればさらに雪崩を打っていく可能性は否定できない。ちなみに、会社の直近の有価証券報告書によれば、JR東労組の組合員数は4万4千人弱である。

現在のところはJR東内に新しい労働組合を動きはないし、脱退した組合員が既存の他労組に加盟はしていないが、4月には新卒を迎えることもあり、いつまでもこんな状況が続くとは思えない。JR東には穏健派のJR連合系の労組もあることにはあるが、今まで東労組の占有率があまりにも高すぎたので、少なくても当面はその受け皿にはなりえない。もしかしたら、社員会や社友会ような組織が立ち上がる可能性はある。

脱退は個人、分会、支部、地方本部(地本)など地域、運転、駅、設備、検修など職種でバラバラに行われているが、それそれの現場組合員はもの凄い疑心暗鬼に陥っている。また、高崎地本のよう一括脱退をもくろんでいるところもあるようだ。また、本部や東京や八王子地本のイケイケ路線は事実だが、東北3地本や大宮地本などの本部批判派を良識派と見るのは間違いで、JR東労組内で、稀有な指導者だった松崎明さん(故人・革マル派ナンバー2)の考え方、つまり、「松崎さんだったら、どのように行動しただろう」との解釈を巡っての争いに過ぎないし、もしかしたら、それすらも巧妙な戦術で、仮に本体が弱体化しても、いくつかの地本などが生き残り、革マル派の影響力を引き続いて温存する可能性もある。

実際、JR総連(東労組の上部団体)運動の歴史では、坂入さん監禁事件、九州労の集団脱退など不思議な動きを繰り返したし、活動方針は東労組の大会や執行委員会などで決まっているのではなく、目黒駅近くにあるさつき会館(動労会館)内に法人登記されている「一般社団法人 国鉄・JR労働運動研究会」ですべてが決定されている。まさにここが、JR内革マル派が主導権を掌握している団体である。さらに、本家革マル派の政治組織局や中央労働者組織委員会が関与している可能性も大である。ちなみになぜか、革マル派の機関紙誌「解放」や「新世紀」には彼ら彼女らが声高く誇るべき組織力の結晶・JR総連、JR東労組の記事は一行も登場していない。

今後の展開は予断を許さないが、脱退した組合員が東労組に次々と復帰するようなことが万が一にもあれば、これからの少なくても10年間、会社は人事権を含めて組合の言いなりにならなればならず、方針を後退させることはありえない。官邸筋辺りからも、「絶対に妥協するな!」と強く言われているはずだし、特に革マル派に対しては堪忍袋の緒が切れたと言ってもいいだろう。ただ、民営分割化からのお金儲け第一主義は労務政策とは関係なくやり過ぎであろう。

東労組は民営分割化以来、当局と協力して行動してきたが、前述の浦和電車区事件あたりから“やり過ぎた”と思う。また、松崎明さんが死去してから、コントロールが効かなくなったため、結果的に今回の騒動になってしまった。このまま進むと、31年前に国労の組織人員が壊滅的に減少したように、今度は東労組がそうなることもありうる。まさしく因果応報だろう。

それと、組合費が入ってこないので、財政的にもかなりきつくなるだろうし、労組専従者も職場に戻りたくても、その職場はどこにもないという状態もありうる。特に過去の違法ストや浦和電車区事件で懲戒解雇になった人たち(通称:首なし役員)は、現在では組合費から給料が払われているので、組合員の分母の数が減り続ければ、残留した人たちの一人あたりの組合費がけっこうアップになる可能性が高いし、救済カンパも増えるかもしれない。余談だが、当局が首なし役員を関連会社などで雇っていた驚くべき蜜月時代もあったが、今ではどうなっているのかは分からない。

以上ですが、私には「なるほどな」と思うことも多いし、「そうだったんだ!」と意外な内容もありました。もちろん、友人の分析が的を得ているかどうかは分かりませんが、どちらにしても、JR東の労使問題から目が離せません。その行方によっては、同じく革マル派が浸透していると言われている上部団体のJR総連はもちろんですが、JR北海道、JR貨物にも大きな動きがあるかもしれません。

追加になりますが、友人の言葉を借りれば、“イケイケ路線”の東京、八王子、プラス水戸地本は都県の労働委員会に不当労働行為救済の申し立てを行ったようです。もう、会社とJR東労組の円満解決は完全になくなったでしょうし、もしかしたら、労組内強硬派はストライキを本当に打ってくるかもしれません。友人は、「この混乱が一段落するまで、ほかの交通機関を利用できる移動のときは、できる限りJR線は使わない」と言っていました。

この時期、賃上げ交渉など本来の春闘もやっているので、労使ともに難儀だなと思ってしまいますし、気のせいかもしれませんが、国労の「組合員並びに社員の皆さんへ」の文章がまともに見えてきました。政治的取り組みなどは私のそれとはまったく異なるので、何だか不思議ですね。しばらくは原因不明の鉄道事故が発生しないことを祈るばかりです。

(写真:ヘルメット姿の2枚の写真の1枚目は過去の動労の集会、2枚目は革マル派のデモの様子で、後者は革マル派機関紙「解放」からの引用です。当時は労働者・反戦青年委員会は白メットに青テープ、学生・全学連は赤テープでした。絵解きのない山手線の写真は内回りの新宿駅ホームで撮りました。午前10時前後に続けて到着した5本の車掌さんは全員が女性でした)

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