部位別がんとその検診対策

先週のことですが、厚生労働省ががん患者の部位別や性別などの数を発表しました。「全国がん登録」制度による初めての数値で、とても信用できる内容ですし、これからの、国や自治体のがん対策事業を展開することに役立つことでしょう。もちろん、医療政策全体を進める上でも正確な数字が出てきたのは大いに歓迎できることです。

それで、私が予想をしていたことですが、「やっぱりな」と感じたのは、男女計の部位別がんのトップは「大腸がん」だったことです。この調査では男性のそれは胃がん、女性は乳がんですが、そう遠くない将来、男女ともに大腸がんが第一位になるでしょう。理由は様々ありますが、食生活の欧米化が強く影響しているようです。

そうなると当然ですが、個人の健康管理はとても大切で、同時に会社(健康保険組合など)や区市町村などの検診(健診)事業を今後、どのように展開していくかがかなり重要になります。受診率を向上させるのはもちろんですが、現在の検診のやり方が本当に有効なのかも再検討しなければなりません。

例えば、前述の大腸がんですが、各自治体により異なっているものの、問診&便潜血検査(二日分)をしている区市が多いようです。杉並区では40歳以上の方々が対象となり、自己負担は200円と極めて廉価になっています。すでに受診された皆さんも多いでしょう。医師会なども積極的に啓発しているようです。

ところで、この検査で「大腸がんの疑いあり」となるとどうするのでしょうか。一般的には下部内視鏡検査に移行します。いわゆる大腸カメラですが、この場合は医療保険の対象となり、本人負担は3割となります。しかし、最初から大腸カメラを希望する場合は保険の適用外となり、全額個人負担ですから3万円くらいが必要です。

また、便潜血検査では必ず大腸がんが見つかるわけではありません。だったら、「最初から大腸カメラを」となりますが、裕福な方はともかく、人間ドックなどに追加検査するのはお金がかかりますし、自治体検診では少なくても今はそれに投入する税金もこともあり、実現性はけっこう難しいでしょう。

これは大腸がんだけの問題ではありません。胸部レントゲン検査は自治体検診では当たり前になっていますが、税金負担はいったん置いておけば、いきなりCT検査をやったほうが数段優れています。このX線検査はおもに肺がん対策ですが、同様に胃がんにも言えることがあります。

それは、胃部X線検査(いわゆる「バリウム」)と上部内視鏡検査(いわゆる「胃カメラ」)もほぼ同じ理屈になります。ただ、ありがたいことに、最近は一部自治体でも初めから内視鏡検査を選択できるケースが多くなっています。杉並区の場合は、バリウム500円、胃カメラ千円ですから、選択がしやすくなりました。

ただ、大腸カメラを経験された方はだいたい同じ感想をお持ちでしょうが、腸内をきれいにするために、あのポカリスエットに工業用油を混ぜたような液体を飲み切るのは辛いとか、おしりからカメラを挿入されるのは恥ずかしいとか、無理からぬ理由で受診を戸惑っている人たも少なくありません。

いずれにしても、医療の世界は文字どおり、日進月歩です。超高額ながん薬剤も効能だけ切り取れば異議なしですが、それによって膨れ上がる国民医療費をどうするかの根本的解決は見えていません。自治体のがん検診のあり方が問われているのでしょうし、今までの発想を転換しないと、問題の本質を見失ってしまう可能性があります。

(写真は東京都江東区にある「がん研有明病院」ですが、今日の記事と直接には関係ありません:出典・ウィキメディア・コモンズ)