観光立国はゆっくりと進めよう

 私も武漢肺炎ついては感染症や疫学の専門家、大学教授が書かれた分かりやすい文章を数多く読んでいますが、けっこうその内容が異なっています。経験のない感染症ですから、それは当然のことなのですが、現場で頑張っている医療関係者や自治体職員、自衛隊などをもう少し評価して差し上げても良いような気がします。

 それで、今年はあと5カ月で五輪が開催され、そのあとはパラリンピックもあります。本来ならば、そのこともあって、「来日観光客4000万人」を目論んでいましたが、武漢肺炎の今後の影響を考えれば、かなり難しい状況になってきています。

 実際、韓国は勝手に行きたくないと言っていますので、無理に来ていただかなくてもいいですが、中国を始めとして、最近はけっこう増えてきた欧米やアジアからの方々が減少しているのは、観光産業に携わっている企業や個人商店などにとっては大きな痛手であることは間違いありません。

 政府でもそれへの対策は用意し始めていますが、「本当に4千万人も訪日していただくことが大事なのか。全国各地、とりわけ観光地でのオーバーツーリズムは深刻だ」の声も大きくなっていることも事実です。私もいろいろな場所に行っていますが、それを肌で感じることも少なくありません。

 だいたい、インバウンド、インバウンドと言いますが、彼ら彼女らのわが国での消費がそれほどGDPに貢献しているとは思えません。海外からお客様が旅行を楽しみ、お金を使っていただくことは大歓迎ですが、それによって、観光地を中心に地元の皆さんが迷惑を被ることがあれば、主客転倒というものです。

 どうして、安倍総理や国土交通省はそんなに訪日客数やインバウンドにこだわるのでしょうか。私は安倍さんはそれほど本気ではないものの、他者からの強い要請があるように思えるのです。そこと訪日観光客数が圧倒的な首位である国との関係にも注目しなければならないでしょう。

 武漢肺炎の終息がいつになるか不明ですが、オリパラ後の反動も考えて、インバウンドもいいものの、景気回復の王道である国内での「個人消費」の拡大を真剣に取り組んでもらいたいです。野党も桜ばっかりやっていないで、ちょっとは生産的な質疑をしないと、それこそ「国民から出禁」になってしまいます。

 いずれにしても、自動車製造なども同様ですが、観光も一つの国だけに過度な比重を掛けることはとても危険であると、今回の武漢肺炎であらためて明らかになりました。この感染が一段落したときに、そのことをしっかりと意識した上で、ためらいなく方向転換していかなければなりません。

 でも、悪いことばかりではありません。中国からの便数が大幅に減少している関西国際空港では、フィンランド航空が便数を増やし、英国航空、アエロフロート航空などが20年ぶりくらいに空路を再開するそうです。少しずつでもこのような流れを開拓していけば、歪ではない観光立国が実現するでしょう。