誰も教えてくれない検察のお仕事

 世の中では、検察庁法改正を巡って、ハッシュタグが爆発的に増えたとか、逆にそれは組織的にやったものだとか、東京高検の検事長が安倍さんと親しいとか親しくないとか、喧しい言い合いが続いていますが、検事(検察官)の業務に詳しい友人にいろいろと聞いてみました。以下は今般の揉め事とは関係ありません。あしからず。

門脇:検事って正義の味方のようですが?
友人:確かに超難関な司法試験に合格した人たちですから、頭がいいのは間違いないでしょう。ただ、だからといって、特に正義観とか道徳心とか倫理観とかに優れているとは思えません。警察官や海上保安官など法執行を担う皆さんと同じレベルでしょう。

門脇:警察の取り調べは乱暴で、検察は紳士的と聞いたことがありますが?
友人:テレビドラマや映画の観すぎではありませんか。現在は可視化が進んでいますが、検事だって思いっ切り机た叩いたり、胸ぐらをつかむことなどはやっていました。特に警察の刑事さんにくらべて、エリートであるがゆえ、人情味がない人が少なくないようです。自分が取り調べた容疑者が服役を終えて出所したあと、面倒を見る刑事さんは珍しくありませんが、検事のそれは聞いたことがありません。

門脇:検事の人事は検察内部だけで決めているのですか?
友人:一般的にはそうなのですが、認証官と言って、検事総長、次長検事、全国に六つある高等検察庁の検事長の任命は内閣が行っています。正確には天皇が内閣の助言を得て認証していますが、もちろん、天皇陛下は人事に口を挟むことは一切ありません。

門脇:そうすると、内閣とは総理大臣などで構成される閣議での決定でしょうか?
友人:そのとおりです。閣議は首相を筆頭に、民間からの登用も例外的にはあるものの、国民の民主的選挙で選ばれた国会議員で構成されているので、その人たちの合意がなければ検察の最高幹部には就けません。これは憲法と法律にきちんと明記されていることです。

門脇:それでは、時の権力者の意向に左右されるということですか?
友人:制度的にはそれが可能ですが、日本では政治が検察の人事に積極的に関与することはありません。阿吽の呼吸でやっていますが、ともに人間ですから、どの世界にもあるように、お互いに好き嫌いくらいはあるでしょう。

門脇:検察と言うか検事は政治的中立が厳守されているのでしょうか?
友人:難しい質問ですね。ただ、最高幹部クラスになれば、枢要なポジションの政治家とは当然のようにお付き合いくらいはあるでしょうし、けっこう政治的に動いている幹部検察官もいますよ。ただ、マスコミの記者も知っていてもそのことは喋りませんけどね。

門脇:アメリカでは検察官は国民や州民の選挙で選ばれているそうですが?
友人:大統領制と議院内閣制では制度が違いますから、一概に比較はできませんが、そのとおりです。ここは重要で、内閣の決定がなければ、検察組織や検事は誰からもまったく監視されない危ない集団になってしまいます。しかも、検察官を罷免する制度はありますが、現実的には極めて困難です。

門脇:起訴を独占していることにも関係があるのでしょうか?
友人:刑事事件を起こした人を裁判にかけるか、かけないかを決めるのは検察のもっとも基本的な仕事です。まさに国家権力の代表のような位置づけと言ってもいいでしょう。近年は検察審査会の機能が充実しましたので、過去よりもいくらか風通しが良くなりましたが。

門脇:不起訴とか起訴猶予の場合はその理由を開示しませんが?
友人:起訴されれば公判で犯罪の経過が明らかになりますが、不起訴の場合はその理由を一般的には発表しません。送検した警察に恥をかかせないためだと言う人もいますが、有罪率を常に99%以上に維持したいからかもしれません。

門脇:その有罪率ですが、日本では異常に高いことが指摘されていますが?
友人:これは彼ら彼女らにとっては当たり前のことで、無罪になってしまうような事案はそもそも起訴しませんから。誰だって恥をかきたくないですからね。検事もその例外ではありません。

門脇:判決を下すのは裁判所ですが、そこの判事と検事とは交流があるようですが?
友人:ハイ、「判検交流」と言って、互いに立場を入れ替える制度です。ですから、裁判官の席に検察官が座っていることがあります。しかも、判事と検事が司法研修所で同期だったりすると、その求刑と判決はちょっと心配になります。

門脇:検察官は国家公務員ですから、業務上知り得たことは守秘義務がありますよね?
友人:おっしゃるとおりです。特にほかの国家公務員と比べてもちゃんとしてもらわなければ、国民が困ります。

門脇:でも、新聞などが事件について、「関係者への取材によると‥‥」と書かれていることを目にしますが、この関係者っていったい誰なのですか?
友人:政治家の取り調べや大企業の役員などへの捜査、贈収賄とか特別背任とかですが、これは東京地検特捜部などが行うことが多いです。記事に書いてあることは容疑者に有利になることはまず100%ありませんから、弁護士でないことは確かです。そうすると、検察官しかないと考えるのが常識でしょう。

門脇:しかし、そんなことがまかり通っていたら、事件を担当する検事は国家公務員法違反ですよね。新聞やテレビはどうしてそのことを伝えないのですか?
友人:そんな勇気のある記者はいないですね、もし、そんなことをしたら、事件の情報が入手できなくなり、記事が書けなくなります。当局もそのへんをよく分かっていますので、小出しに情報を与えているわけです。あと、気に食わない記者は容赦なく出禁にされてしまいます。これも自らの恥になりますから、絶対に書きませんね。

門脇:なるほどですね。特捜の一斉捜査のとき、会社の玄関にあらかじめマスコミカメラずらっとが並べられている理由が分かりました。記者自らが足を使って記事を書くことが少なくなっているようにも感じますし、いつもは「人権だ!権力の横暴だ!」と叫んでいるマスコミが検察の言いなりですね。つまり、そのマスコミを利用して世論誘導をしているということですか?
友人:おっしゃるとおりです。情報を小出しにして、世論の動向を見る、あるいは誘導するということです。お約束の隊列をなしての強制捜査ですが、これも事前に、「◯時◯分ころ、大手町にある◯◯商事にガサ入れるからな」と事前にリークしているのです。私たちが普段、見慣れてしまった光景も背後ではそんな力が働いていたということです。もちろん、国家公務員法の重大な違反です。

門脇:それってなんか怖いように思えるのですが?
友人:思い出していただきたいのですが、厚生労働省の村木厚子さんが大阪特捜に捕まったとき、これは100%冤罪だったわけですが、当初は彼女は悪いやつだと少なくない国民は思っていました。幸いにして彼女の身の潔白が明らかになりましたが、あらかじめ描いたシナリオに基づいて捜査を進め、マスコミに都合の良い部分だけをリークするのです。ちなみに、検察は責任を取って検事総長が辞任しましたが、検察情報をいわば垂れ流していたマスコミは知らんぷりをしていました。

門脇:ありがとうございました。そろそろ時間が来ましたが、検察組織のことがちょっとは分かったように思います。
友人:誤解のないように最後に言っておきますが、私は日本の検察を全体的には信頼しています。地方都市の区検で黙々と交通違反の業務を遂行している検事たちも多くいます。ただ、彼ら彼女らも人間ですから、出世もしたいし、できれば退官後はお給料の高い会社などに天下りしたいでしょう。ですが、検察だけが誰からも管理監督されず、選挙の洗礼もなく、中立性も担保されずにやっていれば、使いたくない言葉ですが「検察ファッショ」になってしまします。村木さんの事件がそれを象徴しているでしょうし、キムタクみたいな検察官は現実の世界にはいないということです。冷めた言い方ですが、先ほど申し上げたように、検事の倫理観や道徳心が特に優れているわけでもありません。

門脇:すみません、一つ忘れていました。政権に強い影響力があると言われている団体が、そこの会員が司法試験に合格したとき、「判事や弁護士にはなるな!検事を目指せ!」と指導しているという話を聞いたのですが、これって事実ですか?
友人:私もそのことは耳にしたことがあります。単なる噂なのかどうかは不明ですが、仮に本当だとしたら怖いですね。これを組織的にやっていたら、背筋が凍るほど危険なことです。そうでないことを願っています。

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