民間のPCR検査センターの利用は慎重に

 少し前のことですが、新宿の伊勢丹前を歩いていたら、ご覧のように大型トラックを改造した超ド派手な広告を見ました。このクリニックはもともと、美容整形を専門としていたようですが、ホームページにも唾液によるPCR検査を大々的に宣伝しています。もちろん、ここは医師が代表者の医療機関です。

 それで、PCR検査については同じ感染症を専門とする医師の間でも、意見が別れていますので、すごく重要だと私は思いつつも、そこには触れないでおきます。問題は最近、その数が増えてきた民間のPCR検査センターのことです。“民間”というのは医療機関ではなく、判定を医師がしていないということです。

 ただ、冒頭のクリニックもいわゆる“自由診療”として検査を行っています。つまり、健保や国保は通用せず、100%自費負担となるわけです。これは美容整形なども一部の例外を除いて同様で、区市町村が疑いのある人たちに無料で実施しているPCR検査とはその過程がまったく異なっています。

 そして、東京都医師会なども警告を鳴らしていますが、手軽に利用できる民間PCRセンターには注意が必要です。どんなことかというと、医師会の注意喚起「3つのお願い・お約束」に集約されていると思います。「①慎重に ②油断せず ③逃げないで」ですが、それぞれを簡潔に解説しています(以下、医師会の文章を一部の表現を分かりやすく直しました)。

①慎重に 正確な検査なのか  個人情報などの管理体制は万全か 結果報告は確実なのか フォローアップ体制は心配ないか
②油断せず 偽陰性や偽陽性の可能性もあり 三密を避けてマスク・手洗い・消毒を忘れずに 心配ならかかりつけ医などに相談を
③逃げないで 新型コロナウイルスは法律上の指定感染症 提携医・かかりつけ医か近医に電話相談を 医師が必要と判断したら行政指定機関で再検査を

 以上ですが、もっとも心配なのは陽性となった場合、そのセンターには保健所への連絡義務はないことです。例えば、杉並区内には2カ所の民間センターがありますが、区としてはその業者へ陽性者が出たとき、「お願い」しかできないのです。これは区がさぼっているのではなく、建て付けから仕方ありません。

 さらに危険性があります。陰性になれば、「もう、何の心配もなく出歩けるぞ!」となり、陽性になれば、「会社に迷惑をかけるから黙っておこう」となる可能性も少なくないことです。私は民間のPCR検査センターを一概に否定するつもりはありませんが、最低でも陽性になった場合は、保健所などに連絡されることが極めて大切でしょう。

 なお、クリニックなどの医療機関が自由診療として行っているPCR検査で陽性判定が出た場合は必ず保健所に報告され、以降は保健所に指示に従うことになります。それによって、入院、ホテル療養、自宅待機などが決まります。確かに医療機関による検査代金は安くありませんが、より安心であることは間違いありません。

 ただ、全国からこのクリニックに送られてくる検体(唾液)が陽性と判定されたとき、医療法人の所在地である中央区の保健所に届け出ています。なにせ、ここだけで実績が20万件を超えているそうですから、これでは、正確な都内の陽性者数を把握することはできなくなっています。自由診療ですから、儲けることも特に問題ないのですが、課題はとても多いようです。

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