自民党総裁選挙では、「国民の民意」がどうたらこうたらと言われていました。でも、ちょっと考えれば分かるのですが、自民党員だけの選挙では民意などではあり得ません。それに比べて間もなくスタートする衆議院選挙は文字どおり、政権選択選挙であり、知りうる限り、これに勝る民意はないでしょう。つまり、私たちの「清き一票」で政権を変えることも、変えないこともできるのです。
それで、一時は自公政権を倒すと意気込んでいた立憲民主党ですが、叫んでいることはそれほど違わないものの、だんだんカラ元気なっているような気がします。それにつれて、代表(党首)の枝野幸男さんの発言のユニークさが急上昇しているようです。特に自民党を揶揄して、「表紙だけしか変わらない」と言われていましたが、ご自分の党は中身どころが表紙すら変わらないままです。
また、野党ですから政権批判は当然ですし、民主党政権時代の自民党の攻撃もけっこうえげつなかったです。ただ、この間の政局では菅内閣に対して、「辞めろ!辞めろ!」→「政権をほっぽり出すのは無責任だ!」→「我々が菅総理を辞任に追い込んだ!」と、立民幹部の頭の中を覗いてみたくなるほど、めちゃめちゃな展開になっていました。一般社会ではこのような非常識な変わり身は恥ずかしいことですが、野党第一党では関係ないようです。
さらに非常識を通り越して、幹事長の福山哲郎さんの発言には呆れるというか、公党のナンバー2に対して失礼とは思いますが、「大丈夫かな?この人は」と疑ってしまいました。曰く、「菅総理をたった1年でお払い箱にした自民党の罪は極めて重い」だそうです。いつも申し上げているとおり、この方はこの国に何か大きな不満をお持ちのようですが、ここまで来ると、最近はCOVID-19のせいでギャグの切れ味が落ちている(大阪の先輩談)吉本興業を完全に超えたようです。
まあ、枝野さんも、福山さんも、国対委員長の安住淳さん(友人談:お笑い三人組)も思考回路が同じなのでしょうね。中心メンバーも中華料理店の回転テーブルを移動しているだけで、座っている人たちはほぼ固定のようです。一方、今や盟友の日本共産党は党内選挙などまったく存在しておらず、同じ人(志位和夫さん)が何と!20年以上、中央委員会委員長を務めているのですから、こちらも何かの冗談かと思います。
そして、立憲民主党と共産党の間では意味不明の協力体制が整ったのか、そうでないのかちっとも分かりませんが、立民は共産党の票がもっともっと欲しいならば、頭の下げ方が足りないと思います。それでなくても、彼ら彼女らは、新内閣のご祝儀相場、前総理への再評価、共産党接近による忌避感、応援団・連合の会長&事務局長異動、COVID-19感染者の激減、順調に進むワクチン接種という6重苦の状況で選挙を戦わなければなりません。
おこがましいのですが、もう、助けてくれるのは共産党しかありません。私は区議会、都議会と多くの共産党の地方議員と接してきましたが、思想信条は正反対なものの、本気で日本を共産主義国家にするという一途な思いは尊敬に値するでしょうし、人間的にはとても魅力的な人たちも少なくありませんでした。区議時代は「こっちと取っ替えて!」と、お願いしたいくらいの人物もいらっしゃいました。
ですから、立民は最大最高の礼を示せば、相手も統一戦線論に基づいていろいろ考えているわけですから、必ずさらなる協力をしてくれるはずです。具体的には全部ではないものの、小選挙区で共産党の候補者を降ろす、立民の候補者への応援を強めることです。この場合、さすがに共産主義者ですから、口先だけで、「私たちは全力で支援します」などはありません。一度決めたら真面目にやるのが共産党です。
その意味では良い見本があります。申し上げるもなく、自民党と公明党の関係です。もともと、両党の支援者の経済的、地域的基盤はかなり異なっているのですが、お互いに我慢をしながら、1999年から野党時代を含めて20年以上、協力してきた歴史があります。それと比較すれば、立民と共産との考え方に今やさほどの隔たりはないのですから、より濃厚な関係を築けるはずです。
ただ、公示と投票まで時間がありませんから、この際、枝野さんは、「共産党と閣内協力を行い、自公政権のように大臣も一つだけだが渡す」と思い切った提案を示すべきでしょう。「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」ということわざもありますが、もう一つは枝野さんが、「何としても勝たせてもらいたい。もし、政権交代できなければ私は潔く代表職を辞す」と言えば、その本気度を信じてもらえるかもしれません。
いずれにしても、民主主義の定義として、「健全な野党がなければ、健全な与党もない(その逆も)」は正しいと思います。共産党大臣の誕生が日本の民主主義にとって良いことなのか、そうでないのかは様々な意見があるでしょうが、立民は待ったなしの判断をしなければ沈没してしまいます。まさに正念場の政権選択選挙です。繰り返しになりますが、立民は共産党を政権内部に入れることにしか生き残りの道はないと思います。
あと、政策のことを忘れていました。立民は連日のように日替わりで分野別の政策を発表しています。これを有権者に判断してもらうのですから、とても良いことだと思います。しかし、1千万円以下の年収の人たちの所得税をすべて免除するという打ち出しには驚きました。これを実行すると9割以上の納税者が一切の所得税を払わなくてもいいことになります。まあ、野党ですから、リップサービスの必要でしょうが、個人的には今から心配です。
それから、アベノミクスを検証すると言って、その結果が先日に発表されていました。これも立民にとっては政策なのでしょう。与党の政策を野党が検証することも大切だと思います。しかし、ビックリしたのがその報告書で、私は少なくても数十ページの小冊子になると期待していていたのですが、何と!A4サイズ2枚(詰めれば1枚になりそうです)のペラ紙でした。作成した方には失礼ながら、この程度の報告書であれば私でも書けます。
なお、気づいていなかったのですが、衆議院選挙の1週間前に参議院静岡選挙区の補欠選挙があるのですね。今のところは、自民・公明vs立民・国民vs共産党の構図になっているようですが、ここで共産党が自前の候補者を降ろすことができるかどうかが一つの鍵になりそうですし、共産党としては高く売りたいでしょう。その結果により、本丸の衆議院選挙で与党が大勝利するのか、野党がボロ負けしないのか、大きな分水嶺のような気がします。
【追加】昨日から始まった上述選挙ですが、結局は共産党は候補者を降ろしませんでした。つまり、野党共闘はできなかったのです。というか、立民&国民サイドからその要請がなかったというのですから、仕方ないでしょう。静岡には静岡の事情があるのでしょうが、自民党人気が高くなっていることもあり、共産党も想像ですが、「どうせ政権交代はできないんだから、候補者を降ろさずに比例区の票を稼ぎたい」と思っているのかもしれません。枝野さんは全国小選挙区の半数で与党と競っていると言われていましたが、残りの半数はどうなっているのでしょうか。そちらのほうに興味があります。しかも、この分析は菅総理が総裁選挙に出ないと言われた前の状況ですから、なおさら知りたいと思います。