きょうのタイトル「トルコの英断を高く評価する」と言いたいところですが、当初からトルコの落とし所は決まっていたのでしょう。だからこそ、スウェーデンとフィンランドがNATO加盟の手続きを始めたころ、猛烈に反対して、それにより、両国やアメリカの譲歩を引き出したものと思います。外交の世界ではこのような老練な対応はとりわけ珍しいことではないようです。
確かにクルドの問題は私たちにはとても難しくて理解できないのですが、トルコでは多くの国民が犠牲になっていることは間違いありません。ただ、表向きはそれの解決に向けてスウェーデンとフィンランドが努力するとなっていますが、いちばんの決め手はアメリカがトルコに対して戦闘機などを売却すると、エルドアン大統領(写真中央)にそっと連絡したからでしょう。
また、報道はされていませんが、我が国とトルコとの伝統的友好関係が役立った可能性もあるような気がします。もともと、トルコも日本もソ連・ロシアの脅威を深刻に受け止めていて、日露戦争でロシアを破ったとき、トルコでは自分の子供に「トーゴー(東郷平八郎)」と名前を付ける親が少なくありませんでした。それと、今から130年前のエルトゥールル号遭難事故も有名ですね。
そして、その恩返しとも伝えられていることもよく知られています。それは、イラン・イラク戦戦争のとき、フセイン大統領は、「今から48時間後に、イランの上空を飛ぶ飛行機を無差別に攻撃する」と宣言したのですが、当時の日本は厄介な法律に縛られていて、自衛隊機も日航機も救助に向かうことができませんでした。そのとき、トルコは救援機を出してくれ、日本人215名の生命が救われました。
ですから、今回の決断もアメリカだけではなく、裏方で我が国がかかわっていたことは否定できません。その日本が来年から国連の非常任理事国になることが決まりました。NATOの会談に初めて加わったことも象徴的でしたが、この国が今まで以上に飛躍的に世界から注目されます。間もなく参議院選挙の投票日になりますから、各党の外交・安保政策を比較してみるのもいいでしょう。
それにしても、虐殺・強姦・盗人ばかりか、人さらいまで行っている総司令官のプーチン大統領はますます窮地に陥ることは確実です。多分ですが、スウェーデンとフィンランドの加盟決定は「迅速審査」されるはずです。そうなると、NATOとの国境線の長さは一挙に2倍になりますが、身から出た錆とはこのことで、経済制裁もかなり効き目を増していて、さらに彼は苦しい立場になると思います。
私たちはNATOのストルテンベルグ事務総長の言葉を肝に銘じなければならないでしょう。曰く、「エネルギーや食料の価格高騰はウクライナが毎日多くの人命によって払っている代償とは比較にならない」「中国の台頭は、われわれの利益、価値、安全保障への挑発だ」と。これらも、参議院選挙投票の参考に大いになると思われます。
確かに日常生活に影響のある値上げはけっして歓迎するものではありませんが、だからといって、「岸田インフレ」などと悦に入っている人たちは滑稽ですらあります。参議院選挙はいわゆる政権選択選挙ではありませんが、中国共産党、北朝鮮、ロシアという独裁国家に囲まれた我が国の自由と民主主義を守るためには、どの政党に、どの候補者に投票したら良いのかを判断する絶好の機会かもしれません。